2015年5月24日日曜日

5月19日 第8回mirai Conference


今回の講師は株式会社レ・サンクの取締役、兼ミュージアムショップ事業責任者を務める田嶋孝成様です。

司会進行は田尾です。

まず始めに田嶋様の紹介です。

1979/8/5
静岡市生まれ静岡市育ち。
金沢工業大学大学院 経営工学修士。
国内大手SI会社にシステムエンジニアとして就職。企業向けのシステムを多数開発。
コンテンツワークス株式会社にてサービスディレクターとなり、
photobackなどのWebシステムの全体の設計を見ながらサービスの戦略や商品企画などを設計してく。
静岡に戻り、株式会社レ・サンクにて取締役 兼 CIO 兼 MS事業部責任者を務める。
静岡市立登呂博物館ではミュージアムショップ、静岡市立芹沢銈介美術館では売店などの事業も開始。
掛け持ちで株式会社HIEROPHANTにて取締役 兼 CIOを務める。




















講演では、よく質問される内容についてをお話しして下さいました。

【レ・サンクさんって何の会社ですか?】

デザイン会社です。
…広告デザイン、ビジネスツール、ビジネスプランニング、
イベント企画、システム開発、システムコンサル 他 多数

紙もやればweb、映像もやるし、文化施設展示などの空間もやる。


【最近はどんな仕事をしていますか?】

神棚を作っているメーカーさんの店舗展開
司法書士さん開業に伴う制作
洋服屋さんのWeb制作
おにぎり・お惣菜の店のロゴ&袖看板制作
各種視察(関東3ヶ所、シンガポール) など


【仕事の営業はどうやっていますか?】

今はキャパオーバー中で、ほぼしていない。


【社内にデザイナーは何人いますか?】

デザイナーはいません。
オペレーションレベルなら社内スタッフが、
クリエイティブレベルならフリーランスのプロと
一緒に作る。


【プロの条件って何ですか?】

プロとプロではない人の境目は考え方と姿勢にある。
プロは見ていること、考えていることが圧倒的に深い。

世界のほぼ全てのモノはデザイン(設計)されていて、
それには「目的・役割(機能)・ルール」がある。
プロはそれを深く考えているし、常に学んでいるし、
常にそこで生み出す苦労を続けている。
だから、そこのある程度の経験を持ったプロは何か
新しいモノを作るときの意思決定が早い。
そういった明確な行為がある。


















【最近のデザイン業界について教えてください。】

1、国内国外合わせて第一線では高度化

全体最適化を図る傾向にある。

デザインの高度化と融合(IoT)
書籍『融けるデザイン-ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論』
今までそれぞれの役割でそれぞれのプロダクトだったものが
どんどん融け合っているという内容の書籍。

実際にIotを体験したいなら…
東京都渋谷区 FabCafe Tokyoあたりがとっつきやすい。
Fab Lab…世の中のほぼ全てのものを作るを目標として、
3Dプリンタやレーザーカッターなどの個人で持つには
ちょっと大きい工作機械を備えたワークショップ。

FabCafeはカフェの中にそれがある場所。
その場を使っている企業さんもいる。
もし興味があれば触れてみるのも面白いかも。


2、産地×デザインは次のフェーズへ

生産者×クリエイターのある種のブーム。
2013年 産地とデザイン会議2013
プロジェクトのあり方を模索する動きが進んでいる。
今デザイナーはものを作るだけではなく、
ものを作るところから販売・流通までみるべきかどうか?

生産者は売り上げを伸ばしたくてクリエイターとやってみたがうまく市場にのらない。
→デザイナーがその責任のフォローをする。

これからは色々な人たちの力を借りていく形が主流になっていくかも。

3、クライアント受注型制作、サービスインフラが充実し、専門性の再定義へ。

〔サービスインフラが充実〕
・DTP環境の一般化と高機能化
・クラウドソーシングの台頭(時間・距離の障壁除去)
・プリントサービスの簡単化(Wab入稿、Word対応)
・オペレーターフリーランサーの増加
・制作単価の低下、国内人件費の相対的高騰


【大変ですか?】

不安の声はよく聞く。

価格的な話で当たり前な内容だけれども…
企業さんがかける広告宣伝費は売り上げの1%~5%くらい。
静岡の方向けにビジネス展開すると規模は縮小、
だから制作の単価はどうしても落ちてしまう。
静岡市民:71万人 東京都:1,355万人(約20倍に近い規模格差)
静岡市で1人集めると、東京では20人集まる。
ユニクロなどのグローバル企業だと年商が1兆、
そうすると広告費が600億円になる。



















こういったものはなくならない問題だから
そういう環境だと思って腹に落とす。

さらに言うとメディアが分散してきている。
昔はテレビCM一本だけでも認知度が変わったが、
現在はチラシ、ブログ、Web上の広告など細分化。
かけたお金とリターンがしっくりこない。

さらに…都内の山手線中吊り広告1本数で1000万人には告知がいく。
静岡だと自転車、自動車、バスなどを使って何処かへ行く人がいるため、
電車の中吊り広告だけというわけにはいかない。
ここでさらに広告の細分化されていく。

【負のスパイラルですか?地方のクリエイティブは危機?】

クリエイターとして働くなら不安が一番邪魔。
そんなことを考えていたら何も生み出せない。
さらに足を引っ張る要素は「今までこうだった」
ないがしろにしろというわけではないけど、
一旦リセットして考え直しましょう。

問題の答えとしては…
大丈夫。魔法のデザイン会社ならね。
株式会社レ・サンクが目指している一つの理想の形。

マーケティングの有名な格言
















ドリルが欲しいんじゃない、穴が欲しいんだ。

ドリルを買いに来た人は少なくとも何か目的があって、
あるサイズのある穴をあけたい。
だからドリルを売るにはの話をするのではなく、
今どういう穴が必要なのか、何を組み立てているのか、
材質は何なのか、直径はどのくらいか、コンセントが使える環境での使用かなどを話す。

デザインの分野でも同じような格言がある。

















橋をデザインするのではなく、河を渡るシステムを作れ
(PHILIPSデザイン・センター)

橋を何色にするかは解決に繋がらない。
お客さんは河を渡りたいだけであって、橋が必要なのか、船がいいのか。

クライアントが望むこと。
・フライヤーが欲しいんじゃない、イベントに集客したい
・店舗が欲しいんじゃない、売り上げを伸ばしたい
・Webが欲しいんじゃない、多くの人に知って欲しい
・カードが欲しいんじゃない、新規/リピーターを獲得したい
・新規事業が欲しいんじゃない、ビジネスを次へ進めたい…
How toに縛られない。その向こう側にある「何をしたいか」が一番大事。

「魔法のデザイン会社」というのはその結果を常に出し続けられる会社。

株式会社レ・サンクのキャッチコピー『あなたの隣で考えるデザイン会社』
「これいくらで作って」という会社よりも「こうしたらいいよって」という考える方向にシフトしている。




















という内容のお話をして頂きました。


続いて質疑応答です。









































Q.何故サービスデザインの方向へ?

経営工学を学んだ理由は社長になりたかったから。ただ、それがなれるなれないというよりも単純に何か会社を動かす、会社をやるということに対して興味があったから経営工学を学びに一旦金沢へ。
就職してエンジニアになった後、BtoBの仕事をしていて、色々な企業さんを見て、お客さんを相手にする仕事が魅力的に見えた。そしてphotobackというWebシステムのある会社に就職(BtoC)。


Q.何故静岡で株式会社を? 

実は株式会社レ・サンクは僕が作ったわけではない。言ってしまえば実家です。
4050歳くらいの頃に母親がやると言い出し、女性5人を集めて立ち上げたのが株式会社レ・サンク。うつったきっかけは母親の苦労を見てしまっていて、自分の持っている技術で何か手助けができないかということと、丁度子どもができて戻ってきたからという理由です。


Q.失敗して、責められたことってあるんですか? 

責められる経験はないです。
これはできる、これはできないをはっきりさせる。
実際に自分が手を動かすか動かさないかもあります。
その人の役割と責任、自分の役割と責任というようになんでもクリアにさせておく。
もし何かが起きたとして、自分がその役割を全うしていなかったら怒られるんでしょうけど。


Q.営業をしていないのにどうやってお仕事をもらっているのか?

嬉しい限りですね。なるべく自分たちが何かをやろうと思っている時には、目的をはっきりさせて、何が必要かという話をするじゃないですか。それで一緒に考えた上でやっているので、お客さんもそれに対して反省ができるし、自分たちもさらにそこに対してもう一言言える。全部を一回でやろうとすると、絶対にうまくいかないので、わかりやすい場所、分かりやすい工程で一回落としてあげるというのをちょっと意識してやっている。そうすると一回終わって、「次はこうしよう」となるとやはり次の制作へ、という形で繰り返しをやっているような気がします。


Q.静岡と東京のデザイナーの考え方の違いなどがあれば教えてください。

デザイナーの考え方の違いは実は地域性ではなく、デザイナーがいる周りの人たちに影響されるのがすごく大きいと思っています。真剣にやっている人のところには真剣な人が集まる。地域がどうこうというのは一連には言えないですけど、たしかに東京は不特定多数なので、すごく自立心の高い人は多いので、もしかしたら多いのかもしれないですね。























今回の講義では、考えるデザイン、最近のデザイン業界について
貴重なお話を聞かせていただきました。

田嶋様、お忙しいところありがとうございました。
また、ぜひ常葉大学に来ていただけたら嬉しいです!



そしてこの講演会へ来てくださった大勢の方々、お疲れさまでした。
次回のクリエイター講演会もお楽しみに!


デジタルデザインコース2年 松浦里恵




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